Shopifyのセッション数やCVRが急に変わったとき、最初に決めるべきことは「何が原因か」ではなく、その数値を広告判断の母数として使ってよいかです。
ボットやクローラーを含む自動アクセスは、広告・SEO・商品ページの変更がなくても、セッション関連の指標を動かします。この状態で全セッションだけを見て広告を停止・増額すると、実際の人間の来訪者の動きとは異なる理由で予算を変えることになります。
Shopify Analyticsでは、Human or bot sessionディメンションを使い、セッション関連の指標を人間・ボット別に確認できます。Shopifyはこの機能を、広告流入の品質や事業計画に関わる分析にも利用できると案内しています。仕様確認時点は2026年9月9日です。[1]
この記事で扱うのは、ボットを完全に遮断するための設定ではありません。計測タグに欠損や二重計上が見当たらないにもかかわらず、判断用の母数に自動アクセスが混ざる場面で、広告判断を一度保留し、再開可能な状態に戻す運用です。
広告の変更は、「全セッションで良く見える/悪く見える」だけでは実行しません。人間セッションに切り分けた後も同じ方向に変化しているかを、判断の前提にします。
異常を見つけた直後は、原因調査を広げる前に、対象期間と影響範囲を固定します。期間の取り方が各ツールでずれると、後から比較できません。
次の条件を判定台帳の冒頭に記録します。
ここで重要なのは、変更がなかったことを「ボットが原因」とみなさないことです。変更履歴は、計測設定変更による差分を先に切り分けるための確認項目です。
次にShopify Analyticsで、急変がどの流入に集中しているかを見ます。少なくとも以下の粒度で確認します。
たとえば、全体セッションだけが増えているのか、特定の参照元・ランディングページ・時間帯に集中しているのかで、次の確認対象は変わります。特定の広告キャンペーンだけが変化している場合も、直ちに広告配信の成否とは決めず、人間・ボットの内訳を確認します。
次のいずれかに該当するなら、当該チャネルの増額・停止をいったん保留します。
「保留」は広告を必ず停止する意味ではありません。新規の増額・停止・配分変更をせず、既存の配信を維持したまま、人間トラフィックを基準に再評価する状態です。緊急のブランド毀損や予算上限超過など、別の停止基準がある場合はそちらを優先します。
Shopifyのボットフィルタリングは、レポート上で自動トラフィックの影響を切り分けるための機能です。レポートの対象はセッション、セッションCVR、訪問者数などのセッション関連指標です。[1]
レポートを1本に詰め込まず、次の2本を用意すると判断しやすくなります。
1. 全体監視用レポート
Human or bot session2. 原因の切り口用レポート
Human or bot sessionを人間、次にボットへ切り替えて比較1本目では時系列の変化を見て、2本目では流入源やページの偏りを見ます。全体レポートでボットの変化が見つかっても、人間セッション側が安定していれば、人間向け広告の予算変更を急ぐ根拠は弱くなります。
判定台帳には、各期間について最低限次を残します。
| 区分 | 記録する値 | 判断での役割 |
|---|---|---|
| Shopify・全体 | セッション、セッションCVR | 異常が最初に見えた値 |
| Shopify・人間 | セッション、セッションCVR | 広告・ページ評価の中心となる値 |
| Shopify・ボット | セッション、セッションCVR | 全体値との乖離の説明材料 |
| Shopify・流入別 | 参照元等ごとの人間/ボット内訳 | 影響範囲の特定 |
数値だけでなく、レポートのフィルター条件、抽出日時、対象期間も残してください。Shopifyのボット判定は後から更新される可能性があるため、後日に同じ期間を見た数値が変わり得ます。[1]
Shopifyのボットフィルタリングは、2025年10月7日以降に生成された新規データが対象です。それ以前のデータには遡及適用されません。[1]
したがって、前年同月などに2025年10月7日より前の期間を含める場合、「人間セッション同士の比較」とは言えません。この場合は、以下のいずれかに切り替えます。
Shopifyで人間・ボットを分けた後、GA4や広告管理画面と数値が合わないことがあります。この差分を、ただちに設定ミスや重複計測と判断する必要はありません。
GA4では、既知のボット・スパイダーからのトラフィックを自動的に除外します。一方で、除外されたトラフィック量を確認することや、この機能を無効にすることはできません。仕様確認時点は2026年9月9日です。[2]
つまり、ShopifyとGA4は、同じ「セッション」という名称でも、ボットに対する判定・除外方法を同じにできません。広告管理画面もクリックや広告プラットフォーム固有のコンバージョン定義を持つため、三者を同じ値に揃える作業は判断品質を上げません。
比較時は、次の順で確認します。
たとえば、Shopify全体セッションのみが急増し、人間セッション・GA4・広告クリックが概ね横ばいなら、広告の成果改善を示す材料にはなりません。反対に、Shopifyの人間セッション、GA4、広告クリックが同じ期間に増えているなら、広告施策の評価を進める材料になります。ただし、コンバージョンや売上まで含めた結論は、各ツールの計上条件を確認してから出します。
「ShopifyとGA4の差分が何%なら正常」といった固定値は置かないほうが安全です。実装、同意取得、タイムゾーン、集計定義、既知ボットの除外方式が異なるためです。自ストア内で継続して観測できる差分の範囲を台帳に残します。
異常のたびに担当者の感覚で判断すると、同じ状況でも対応がぶれます。そこで、広告予算の操作可否を3区分にします。これはShopifyやGA4が定める公式ルールではなく、社内の意思決定を一貫させるための運用設計です。
次の状態なら、通常の広告判断に戻せます。
この場合でも、全セッションの改善率を広告の成果として報告せず、「Shopifyの人間セッション基準」と明記します。
人間セッションのデータは確認できる一方、特定チャネルやページにボットの影響が残る場合は、影響範囲外に判断を限定します。
例として、特定の参照元でボット比率が高くても、別の広告キャンペーンでは人間セッション・広告クリック・広告費用が継続して確認できる場合があります。この場合、影響を受けた参照元を含む全体CVRで判断せず、対象キャンペーンに対応する人間トラフィックの範囲でのみ、少額または段階的な変更を検討します。
台帳には「何を除外し、どの範囲の数値で決めたか」を書きます。後から予算変更の理由を説明できる状態にするためです。
次の状態では、増額・停止・配分変更を保留します。
保留期間中は、既存予算を維持するのか、予算上限だけを下げるのか、明確な事業ルールに沿って別途決めます。「ボットかもしれない」だけを理由に広告を全面停止するのではなく、判断に必要な観測が不足している状態として扱います。
台帳は高度なBIを作るためのものではありません。異常時の比較条件と意思決定の根拠を、後から追えるようにする記録です。スプレッドシートで十分です。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 事象ID | 日付と連番 |
| 検知内容 | セッション、CVR、参照元など、何が変化したか |
| 比較期間 | 対象期間、比較対象、タイムゾーン |
| Shopify全体 | セッション、セッションCVR |
| Shopify人間/ボット | 各区分のセッション、セッションCVR |
| 偏り | 参照元、地域、ページ、時間帯で見つけた特徴 |
| GA4 | 同期間のセッション推移、確認したレポート条件 |
| 広告管理画面 | クリック、費用、広告側コンバージョンの推移 |
| 変更履歴 | タグ、テーマ、広告、商品、キャンペーンの変更 |
| 判定 | 通常運用/限定判断/保留 |
| 実施内容 | 維持、段階変更、技術確認など |
| 再確認日 | いつ、何を見て判定を更新するか |
広告判断の再開条件は、ボットがゼロになったことではありません。以下を満たし、比較可能な人間トラフィックの基準ができたことです。
この記録を月次の広告レビューにも残すと、全セッションの数値と人間セッションの数値を混ぜずに、施策評価の基準を継続できます。
ShopifyのHuman or bot sessionによるボット判定は、HeadlessおよびHydrogenのストアでは利用できません。[1] 該当する構成では、この記事の人間・ボット別レポートをそのまま前提にできません。
その場合は、CDN、サーバーログ、フロントエンドの計測、GA4、広告管理画面など、利用中の観測点ごとに「どのアクセスをどう除外・記録しているか」を先に整理してください。Shopifyの通常ストアと同じ判定台帳を使う場合も、Shopifyの人間区分が空欄である理由と、代わりに採用する観測値を明記します。
また、分析上の分類と防御策は分けて扱います。Shopifyは異常パターンの監視、hCaptchaの確認、テーマ・アプリの更新、注文リスク評価などを案内しています。[3] Shopify Plusの追加ボット保護はセール時のチェックアウトを対象とする機能であり、サイト全体の分析トラフィックを除去する仕組みとしては扱えません。[3]
遮断策を導入する場合も、導入前後で人間トラフィック、購入導線、広告計測がどう変わったかを別途確認します。防御を強めることと、広告評価に使える比較可能な母数をつくることは、関連していても同じ作業ではありません。
記事では答えきれない個別の状況にもお応えします。