越境ECを始める際、「海外から注文できる状態にする」ことと、「海外注文を問題なく完了・返金できる状態にする」ことは別です。
受注後に関税の請求、配送先住所の不備、通関での確認、返品希望が発生すると、CS・物流・経理の誰が判断するかが問われます。公開前に条件を決めていなければ、注文ごとの個別対応になり、販売継続の判断もしにくくなります。
最初から多数の国・全SKUを対象にする必要はありません。まずは1か国・10 SKU・1配送方式に限定し、配送と返金の責任範囲を検証できる単位で始めます。
本記事の仕様確認日:2026年8月24日。カートや配送事業者の機能・受付条件は更新されるため、公開・設定変更前に各社の最新案内も確認してください。
対象国を選ぶ際は、需要予測だけで販売開始を判断しません。少なくとも、次の条件を1枚の開始判定シートに記録します。
| 確認項目 | 公開前に確定する内容 | 担当の例 |
|---|---|---|
| 対象国・地域 | 最初に公開する配送先。離島・私書箱などの除外条件も含む | 事業責任者 |
| 対象SKU | 販売するSKU、セット品、数量上限 | 商品担当・物流 |
| 販売対象外 | 輸出規制、配送事業者の取扱制限、仕向国の禁制品に該当しないか | 物流・法務確認担当 |
| 配送方式 | 国際郵便、国際宅配便、代行型など、実際に使う方式を1つに固定する | 物流 |
| 送料 | 購入者への表示額、送料無料条件、追加請求をしない範囲 | EC担当・経理 |
| 関税・輸入税 | チェックアウトで回収するか、到着時に購入者へ案内するか | EC担当・経理 |
| 返品・返金 | 返品先、返送料負担、通関費用の扱い、返金対象 | CS・経理 |
| 住所不備 | 入力時の案内、確認連絡の期限、発送保留・取消条件 | CS・物流 |
国際郵便を利用する場合、税関は、受取人の氏名・住所や税関告知書を原則として英語またはフランス語で詳しく明瞭に記載するよう案内しています。また、輸出規制品と仕向国ごとの禁制品を事前に確認する必要があります。商品ページの翻訳前に、商品名・素材・用途・価格を通関用に説明できる状態か確認してください。
開始判定シートの「販売対象外」は、商品カテゴリだけで管理しないことが重要です。同じカテゴリでも、容量、成分、電池の有無、セット内容、価格によって配送・通関上の確認事項が変わるため、最初はSKU単位で判定します。
越境受注で混乱しやすいのは、商品価格・国際送料・関税や輸入税が、購入者にとってはまとめて購入費用になる点です。ストア上での表示と、配送時の請求条件が一致しているかを確認します。
実務上は、主に次の2つを比較します。
Shopifyでは、Marketsの市場ごとに税・関税の表示・徴収を設定できます。ただし、計算精度には商品ごとのHSコードと原産国の登録が必要であり、実際に請求される金額が見積額と異なる可能性もShopifyが案内しています。したがって、「関税込み」と表示する前に、対象SKUの通関情報が揃っているかを確認します。
さらに、Shopifyでチェックアウト時に関税・輸入税を徴収する場合は、設定だけでは完結しません。実際の発送で使う配送ラベルがDDPに対応していること、配送事業者がその条件を受け付けることを確認する必要があります。ストアで回収したのに、発送がその条件に合わない状態は避けてください。
送料も、配送原価だけで決めると返品時に差額が残ります。開始判定シートには、次の4項目を並べて記録します。
「送料は購入者負担」とだけ書いても、初回発送と返品返送で負担範囲が異なるなら十分ではありません。通常返品、初期不良、誤配送、受取拒否、住所不備による返送を分けて定義します。
Shopifyで越境販売を始める場合、Marketsの設定画面だけを確認して公開するのではなく、商品情報と配送実務までつなげます。対象市場で関税・輸入税を徴収する設計なら、特に次の順で確認します。
HSコードと原産国は、関税・輸入税の計算に関わる情報です。10 SKUを選んだら、商品名、販売価格、HSコード、原産国、素材、用途を台帳に記載し、ストア登録内容と照合します。
複数の構成品を含むセット商品は、通関時の品名説明も含めて配送事業者へ確認する余地を残してください。曖昧な商品名のまま、表示・徴収額だけを先に確定させないことが大切です。
Shopify Marketsで徴収設定を有効にした場合でも、配送ラベルや配送事業者がDDPに対応していなければ、購入時の想定と配送時の扱いがずれる可能性があります。テスト注文では、次を一組で確認します。
Shopifyは、返金済みの輸入税を常に回収できるとは限らない旨を案内しています。つまり、購入者に商品代金と税額を返金した場合に、販売者側で税額を回収できるとは限りません。
このため返品ポリシーには、単に「返品可否」を書くだけでなく、返金対象を分けて定めます。少なくとも、商品代金、初回送料、返品送料、購入時に徴収した関税・輸入税について、通常返品と不良品対応それぞれの扱いを決めてください。
BASEでは、海外販売に「かんたん海外販売」を利用する代行型と、送料詳細設定 Appで国・地域別の配送方法・送料を設定して自社発送する方式があります。両者は購入者に海外配送を提供する点は共通でも、受注後に自社で担う作業が異なります。
代行型では、対象範囲、発送先、手数料や配送条件、返品時の連絡経路を、BASEの最新の公式案内で確認します。自社の通常配送ポリシーをそのまま海外注文に適用できるとは限らないためです。
確認シートには、「購入者からの問い合わせ先」「代行サービス側へ引き継ぐ条件」「返金を実行する担当者」を書き分けます。問い合わせ窓口が自社でも、返送先や配送状態の確認先が別になる場合、CSテンプレートにも反映が必要です。
送料詳細設定 Appで自社発送をする場合、送料を設定していない国・地域の購入者は注文できません。また、海外住所では利用できないAppsや決済条件があります。公開対象国を増やす前に、対象国の住所・通貨・決済で実際にチェックアウトできるかを確認してください。
自社発送では、国別送料の登録だけで完了としません。発送書類の記載、配送追跡の案内、配達不能時の返送先、返品受領後の返金手順までが一つの運用です。代行型と自社発送を併用するなら、商品ページや配送ポリシーで、購入者がどの条件になるかを判断できるようにします。
住所の表記ルールを購入者に求める場合、案内文を配送ポリシーの末尾に置くだけでは、入力時に読まれない可能性があります。一方で、チェックアウトの入力項目を任意に変更できる範囲はカートやプランにより異なります。
そのため、特定の入力制御ができることを前提にせず、次の3段階で運用を設計します。
国際配送に必要な住所表記、電話番号、建物名・部屋番号の必要性、私書箱の取扱可否を短く案内します。英字表記が必要な配送方法なら、その条件と理由を明記します。税関の国際郵便案内でも、受取人の住所・氏名は英語またはフランス語で明瞭に記載するよう示されています。
全注文を担当者の目視に依存させず、確認対象を決めます。例えば、住所の文字種、電話番号の欠落、郵便番号と都市名の不整合、部屋番号欠落などです。実際に利用できる判定機能はカート・配送サービスにより異なるため、まずは注文確認時のチェック項目として台帳化します。
「住所確認が必要な場合は連絡する」だけでは、保留注文が残り続けます。確認メールの送信担当、回答期限、期限内に確認できない場合のキャンセル・返金条件を決め、購入者向けポリシーとCSテンプレートに反映します。
越境ECの返品では、返品を受け付けるかどうかだけでなく、返送費用、通関関連費用、返送先、返金タイミングを決める必要があります。最初の1か国では、少なくとも以下の4パターンを表にします。
| 事由 | 返送先 | 返送料 | 返金対象 | 判断担当 |
|---|---|---|---|---|
| 購入者都合 | 国内返品先または海外返品先 | 原則の負担者を明記 | 商品代金・初回送料・税の扱いを分ける | CS |
| 初期不良・破損 | 証跡確認後の返送先または返送不要 | 販売者側の負担範囲を明記 | 再送・返金の選択条件 | CS・物流 |
| 誤配送 | 販売者が指定する返送方法 | 販売者 | 正しい商品の再送・返金条件 | 物流 |
| 受取拒否・住所不備 | 返送可否を配送事業者に確認 | 購入者または販売者の負担条件 | 返送費・初回送料・税の扱い | CS・経理 |
返品先を日本国内にするのか、販売先の国・地域に置くのかは、販売量だけでなく、返送コストと受領・検品・再販可否で判断します。初期段階では返品先を増やすこと自体が管理対象を増やします。返品先を設けない場合も、返送不要返金を適用する商品・金額・不良判定の条件を定めなければ、担当者判断になります。
設定確認は管理画面のスクリーンショットだけで終えず、対象国・対象SKU・対象配送方式の組み合わせでテストします。実配送まで行うか、配送事業者のテスト環境・事前確認を使うかは契約条件によりますが、少なくとも注文から出荷判断までの情報連携を確認します。
合格条件は「注文が入った」ことではなく、関税・送料・住所不備・返品の各ケースで、誰が何を根拠に判断するかが決まっていることです。初回の運用で記録した例外は、次の国を追加する前に開始判定シートとCSテンプレートへ反映します。対象国やSKUを増やす判断は、その更新後に行うと、設定漏れを抑えやすくなります。
記事では答えきれない個別の状況にもお応えします。